子犬のしつけをはじめる時期

子犬のしつけ
子犬のしつけは、家に迎え入れた直後からはじめていきましょう。ただし、なんでもすぐに教えればいいわけではありません。何を優先して教えるかはきちんと考えておく必要があります。

また、社会性を身につけさせることは、しつけの土台作りになるため、社会化を進めることも大切です。

しつけのベース~社会化~

犬の「社会化」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。一般的に生後3週齢~12、13週齢までの期間を「社会化期」と呼んでおり、犬社会や人間社会で生きていくために必要な「社会性」を身に付けるのに重要な時期といわれています。
社会化は、あらゆるしつけのベースになるものと考えてよいでしょう。

子犬をお迎えするタイミングは家庭によってさまざまですが、早ければ生後2カ月齢でお迎えすることになると思います。つまり「社会化期」にあたるわけです。
子犬の社会化期には、しつけのベースとなる社会性を少しずつ身に付けていきましょう。この時期にしつけのベースをつくりつつ、次に紹介する「すぐにはじめたいしつけ3つ」を並行して教えていきます。
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迎えてすぐにはじめたいしつけ3つ

トイレトレーニングをする子犬

1.自分の名前を覚えさせる

お迎えの日までにできれば名前を決めておきましょう。そして、子犬を家に迎えたら、決めた名前で呼んであげます。
略称で呼んでもOKですが、家族全員で呼び方を統一することを心がけましょう。

名前を覚えてもらうための最大のポイントは、名前によいイメージをつけていくことです。
名前を呼んだ直後にご褒美をあげたり、遊んであげたりと、その子が喜ぶことを意識的に繰り返します。そうすることで「名前のあとには必ずよいことがある」と関連付いて、名前を覚えていきます。
よいイメージを持ち続けてもらうために、「犬の名前を叱り言葉にしない」という点も気を付けましょう。

効率よく関連付かせていくためにはコツがあります。それはタイミングです。
名前をよいイメージとして強く関連付かせるためには、ご褒美のタイミングは呼んだ直後がベストです。
直後であればあるほど強く関連付くため、1~2秒以内を目安にしましょう。

ご褒美のタイミングや頻度は変えていこう

アニコム パフェ 鈴木 知之先生

「ご褒美のタイミングは直後がベスト」というのは、あくまでも関連付くまでの話です。
名前に限らずですが、しっかり関連付いて反応できるようになってきたら、ご褒美のタイミングを遅らせる、または、ご褒美の頻度を毎回ではなく2~3回に1度にするなどランダムにして、意図的にコントロールしていくといいですよ。

「毎回すぐにご褒美をもらえる」という犬の思いを、「そろそろもらえるかも」「次はもらえるかも」と思わせていくことで期待感をもたせるのが狙いです。その期待感が、飼い主さんへのポジティブな意識につながっていくのです。

2.トイレトレーニング

トイレもなるべく早く覚えてもらいたいしつけの一つです。
早く覚えてもらうためには、飼い主さんのサポートのもと、成功を積み重ねていくことが大切です。ポイントを4つご紹介します。

①トイレしやすいタイミングを知る

以下がトイレをしやすいタイミングです。
  • 寝起き
  • 食事のあと
  • 水を飲んだとき
  • 運動中や運動のあと
  • 部屋を移動した直後
はじめのうちは、このようなタイミングで積極的にトイレへ連れて行きましょう。

②トイレしたいときのしぐさを知る

次のような様子が見られたら排泄をする可能性があります。
  • 床のにおいをクンクンと嗅いでいる
  • 落ち着きがなくなり、そわそわしている
  • しゃがんだり、ぐるぐる回ったりする
たとえば、夢中になって遊んでいたのに、急に床のにおいをクンクン嗅ぎはじめたら、排泄をする可能性が高いです。トイレに連れて行ってみましょう。

③動けるスペースを広げすぎない

子犬の場合、まだトイレを我慢できません。お迎えして最初のうちから部屋全体を動き回れるようにしていると、部屋のあちこちでトイレをするようになります。
トイレの学習に合わせ、徐々にスペースを広げていくと不必要な失敗を減らせます。

④成功はたっぷり褒め、失敗は黙って片付ける

トイレでおしっこやうんちができたときは、たっぷり褒めてあげましょう。
失敗してしまったときは、叱らず黙って片付けることが大切。叱るとトイレを我慢したり、隠れてトイレしたりするようになることがあります。

うまくいかなくても焦る必要はありませんが、もし失敗が続くようであれば、トレーナーなどに相談してみるとよいでしょう。
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3.アイコンタクトをとれるようにする

自分の名前に反応できるようになってきたら、次は「アイコンタクト」です。

飼い主さんが見てほしいときに目と目が合うということは、言い換えれば、「飼い主さんの言っていることを聞こう」という意思があるということです。
これから多くのことを教えていくため、まずは「聞く耳」を育てておきましょう。

アイコンタクトを教える方法

【1】愛犬と向かい合った状態で、鼻先にご褒美を近づけて興味をひく
においを嗅がせて、よいものを持っていることを認識させましょう。

【2】ご褒美を愛犬の鼻先から、飼い主さんの目元にゆっくり移動させる
ご褒美を移動させることで愛犬の視線を誘導し、目と目が合う状態を自然とつくります。
このとき、視線を誘導しながら愛犬の名前を呼びます(名前を呼んだら目を合わせることを教えていきます)。

【3】目が合ったらご褒美をあげる
最初のうちは一瞬でも目が合ったら、すぐにご褒美をあげて褒めます。
簡単に目が合うようになってきたら、ご褒美をあげるタイミングを少し遅らせたり、視線誘導せずにトライしたり、少しずつレベルアップさせていきましょう。

子犬が環境に慣れたら、はじめたいしつけ3つ

くしを当てられるポメラニアン
子犬が環境に慣れてきたら、少しずつ次のステップのしつけをはじめます。
アイコンタクトができるようになり、「関係が深まってきたかな」と感じるようになったタイミングがスタートの目安です。

1.仰向け抱っこ

おなかは犬にとって急所の一つなので、仰向けを嫌がる犬も多いですが、「この人はおなかを見せても大丈夫!」と思ってもらえるように練習していきましょう。

犬を後ろから抱え、両膝の上で仰向けにします。落とさないように、胸のあたりをしっかり包み込んであげましょう。お利口に、おとなしくできていたら、興奮させないよう優しく褒めてあげてください。

この練習では、仰向けの体勢をリラックスした状態で受け入れさせることを目指します。決してじっとしているのを我慢させる練習ではありません。

やり慣れていない状況では、多少ジタバタすることもありますが、ジタバタしたときこそしっかりと両脇を抱えて仰向け姿勢を保持します。
もし抵抗せず力が抜けてきているようなら、優しく声がけをしながら、片手でおなかや足先、耳、口周りなど、体全体をゆっくり撫でていきます。
ジタバタしたときのために、いつでもサッと両脇を抱えて仰向け姿勢を保持できるよう、心の準備はしておきましょう。

継続して練習していくと、体のどこを触られても嫌がらない子になるほか、安心して体を預けるようになっていき、信頼もさらに深まっていきますよ。

練習開始や終了のタイミングが重要

アニコム パフェ 鈴木 知之先生

仰向け抱っこを練習するタイミングは、たっぷり遊んだあとなど、犬が疲れて眠くなっているようなときがおすすめです。

また、終わるタイミングも重要です。犬がジタバタしているときではなく、落ち着いているときに終わりましょう。ジタバタしているときに終わらせると、「暴れたら放してくれる」と学習することがあります。

2.お手入れ・ケア(歯磨き、ブラッシング、耳チェック)

以下の日常的なケアは、「いかにリラックスさせることができるか」がポイントです。飼い主さん自身が「やるぞ」というように変に身構えないよう、スキンシップの延長でおこなうとよいです。
いろいろなことを受け入れやすい子犬の時期から少しずつ慣らしていくようにしましょう。

歯磨き

歯磨きをおろそかにすると、虫歯や歯周病が発生しやすくなるだけでなく、将来、食事が困難になり、命に関わる問題に発展する可能性もあります。

最初は口元を触られることに慣れさせるところからはじめ、徐々に唇をめくったり、指で歯肉や歯を触ったりと、飼い主さんの指が口の中に入ることに慣れさせていきます。

先ほど紹介した「仰向け抱っこ」で、リラックス状態をつくれるようになっているなら、その練習の延長で慣らしていくのがおすすめです。仰向け状態なら、実際に歯磨きする際にも顔をのぞき込みやすい、というメリットもあります。
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ブラッシング

ブラッシングも健康な被毛を保つためには欠かせないお手入れです。最初はごく短い時間からはじめるとよいでしょう。

大好きなおやつやおもちゃに意識を向けさせている間にブラシを当てて慣らしていくと、犬がポジティブに受け入れやすいのでおすすめです。様子を見ながら徐々にブラシを当てる部分を広げ、時間を延ばしていきましょう。
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耳チェック

耳のケアにも慣れておきましょう。しつけ的には、触られることに慣れさせるのが目的なので、優しく声がけしながらリラックスした状態にさせることを優先にし、少しずつ触っていきます。
決して無理やりおこなわないようにしましょう。

自宅では、耳の中の見える範囲を軽く拭き取るだけで構いません。もともと犬の耳には自浄作用があるので、過度な耳掃除は逆に耳道を傷つけてしまう可能性があります。

毎日のケアとしては、赤みがないか、黒っぽい汚れがベッタリついていないか、目視でチェックします。
目では見えない奥のほうの汚れは、においが強くなっていないかで確認するとよいでしょう。

耳のチェックに加えて、1~2週間に1回程度、やわらかいコットンなどで見える範囲を軽く拭き取ります。落ち着いている状態を保っていたら、興奮させないよう、優しく「えらいね」などの声がけをして褒めてあげましょう。
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3.ハウストレーニング

「ハウス」は、犬にいてほしい場所を理解させるためのしつけ。「ここにいれば安心」ということを教えてあげるのが大切です。
※一般的にはクレートやケージ、サークルなどを総称してハウスと呼ぶことが多いです

ハウスができるようになっていれば、ドライブなどのお出かけ時に役立つほか、地震などの災害時でも、落ち着いて待機させることができます。

クレートを使ったハウストレーニングの方法(一例)

【1】クレートのドアを開けておき、おやつで誘導する
おやつで誘導し、クレートの近くまで来ることができたらおやつをあげます。はじめからクレートの中に入ることを目指さなくてOKです。

【2】クレートにおやつを置く
クレートの入り口付近(はじめは見える位置)におやつを置いて、自分の足でクレートに近づくようにします。
様子を見ながら、おやつの置く位置を少しずつクレートの奥のほうにずらしていきましょう。
※この段階では、愛犬がおやつを取って外で食べてしまっても問題ありません

【3】「ハウス」の号令を関連付けていく
クレートの奥までスムーズに行くようになってきたら、「ハウス」の号令を使います。クレートの中に行く行為と「ハウス」という号令を結び付けていきます。

【4】扉を閉めて様子を見る
クレートの奥まで入ったあと、静かに扉を閉めます(はじめのうちはすぐに扉を開けてあげます)。動じないようであれば、徐々にクレートの滞在時間を延ばしていきましょう。
急いで閉めようとすると、犬が怖がってしまうため、閉めるときは焦らずゆっくりおこなってください。

犬をしつけるときのポイント

これらのしつけをおこなっていくうえで、飼い主としてはどんな心構えが必要なのでしょうか。これからの充実したドッグライフのために、押さえておきたいポイントをいくつかご紹介します。

違う生き物であることを認識する

「舐める」「噛む」「吠える」「動くものを追いかける」など、犬特有の行動や習性はたくさんあります。

そもそも犬と人間は違う文化のなかで生きてきました。それが一つ屋根の下で、一緒に暮らすことになるので、違いを正しく理解するのは大切なことです。そのうえで、行動の裏にある彼らのメッセージを考えていけるようにしましょう。

なにごとも焦らずに

「早めのしつけが大事」とはいえ、焦って信頼を損なってしまっては元も子もありません。はじめから型にはめようとせず、その子の個性を大切にしてあげましょう。

迎えてすぐの子犬であれば、わからないことが多いのは当然ですし、ある程度の失敗はつきものです。心に余裕をもって、無理せず丁寧に教えていくよう心がけましょう。

小さな「できた」を積み重ねる

しつけがうまくいかず、思った通りに動いてくれないと、「ダメ」や「コラ」が増えてしまいがちです。そうなると、お互いストレスがたまってしまいますよね。

「こうしてほしい」という理想形をいきなり目指すのではなく、「まずはここ」「その次はここ」というように、理想形に向けてのステップを細かくしてあげるようにしましょう。
小さな「できた」を積み重ねていくことが、絆を深めていくコツでもあるのです。

ドッグトレーナーに聞いた! 迎えてすぐの子犬のしつけ方に関するQ&A

社会化期を過ぎた子犬の社会化トレーニングは可能?
社会化期を過ぎた状態で家庭にお迎えする場合もあるでしょう。
すでに社会化期を過ぎてしまったからといって、社会化が不可能になるわけではないので安心してください。

ただし、一般的に生後6カ月ごろから警戒心が芽を出してきます。社会化期におこないたかったことを、一つひとつ焦らずに慎重におこなっていくよう心がけていきましょう。

まとめ

こちらを向く子犬
子犬を迎えて最初におこなうべきしつけをいくつかご紹介しましたが、「何が正しいのかを丁寧に導き、褒めながら教えてあげること」は、どれにも共通していえることです。

子犬のしつけは大変なこともありますが、お利口に育てようと変に身構えず、焦らずにじっくり見守ってあげることが大切です。ぜひ、家族みんなでわが子の成長を楽しんでください。
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